宅地建物取引業法第35条第1項の説明すべき重要事項のうち、同項第6号の2 ロでは、「設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況」と規定されています。
この中の”国土交通省令で定めるもの”については、省令(宅地建物取引業法施行規則)第16条の2の3に列挙されていますが、今回はその中の第5号「建築基準法施行規則第5条第3項及び同規則第6条第3項に規定する書類」とは具体的に何を指すのかを検討します。
まず、建築基準法施行規則第5条第3項は、次のとおり定めています。
「(建築基準)法第12条第1項の規定による報告は、別記第36号の2様式による報告書及び別記第36号の3様式による定期調査報告概要書に国土交通大臣が定める調査結果表を添えてするものとする。ただし、特定行政庁が規則により別記第36号の2様式、別記第36号の3様式又は国土交通大臣が定める調査結果表に定める事項その他の事項を記載する報告書の様式又は調査結果表を定めた場合にあつては、当該様式による報告書又は当該調査結果表によるものとする。」
また、同規則第6条第3項は次のように規定しています。
「(建築基準)法第12条第3項の規定による報告は、昇降機にあつては別記第36号の4様式による報告書及び別記第36号の5様式による定期検査報告概要書に、建築設備(昇降機を除く。)にあつては別記第36号の6様式による報告書及び別記第36号の7様式による定期検査報告概要書に、防火設備にあつては別記第36号の8様式による報告書及び別記第36号の9様式による定期検査報告概要書に、それぞれ国土交通大臣が定める検査結果表を添えてするものとする。ただし、特定行政庁が規則により別記第36号の4様式、別記第36号の5様式、別記第36号の6様式、別記第36号の7様式、別記第36号の8様式、別記第36号の9様式又は国土交通大臣が定める検査結果表その他の事項を記載する報告書の様式又は検査結果表を定めた場合にあつては、当該様式による報告書又は当該検査結果表によるものとする。」
次に、”(建築基準)法第12条第1項及び第3項の規定による報告”が何を指すのかを深堀します。
第1項では、
「第6条第1項第1号に掲げる建築物で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの(国、都道府県及び建築主事を置く市町村が所有し、又は管理する建築物(以下この項及び第3項において「国等の建築物」という。)を除く。)及び当該政令で定めるもの以外の特定建築物(同号に掲げる建築物その他政令で定める建築物をいう。以下この条において同じ。)で特定行政庁が指定するもの(国等の建築物を除く。)の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第3項において同じ。)は、これらの建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築物調査員資格者証の交付を受けている者(次項及び次条第3項において「建築物調査員」という。)にその状況の調査(これらの建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、これらの建築物の建築設備及び防火戸その他の政令で定める防火設備(以下「建築設備等」という。)についての第3項の検査を除く。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。」
第3項では、
「特定建築設備等(昇降機及び特定建築物の昇降機以外の建築設備等をいう。以下この項及び次項において同じ。)で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの(国等の建築物に設けるものを除く。)及び当該政令で定めるもの以外の特定建築設備等で特定行政庁が指定するもの(国等の建築物に設けるものを除く。)の所有者は、これらの特定建築設備等について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者(次項及び第十二条の三第二項において「建築設備等検査員」という。)に検査(これらの特定建築設備等についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。」
と規定されています。
要するに、建築基準法第12条第1項は「特定建築物の定期調査報告」、同条第3項は「特定建築設備等の定期検査報告」のことを指しています。
ここでいう”特定建築設備等”とは、建築基準法施行令第16条第3項により昇降機及び防火設備が該当します。また、東京都の場合は東京都建築基準法施行細則第12条により、一部の建築設備及び施行令で対象とならなかった建築物の防火設備も含まれる点に留意が必要です。
以上を踏まえると、宅地建物取引業法施行令第16条の2の3第5号における「建築基準法施行規則第5条第3項及び同規則第6条第3項に規定する書類」とは、以下を指すと整理できます。
定期調査報告書(特定建築物)
定期検査報告書(昇降機、防火設備、建築設備)
なお、令和7年7月18日現在、国土交通省が公表している「重要事項説明書(売買・交換)」の様式では「定期調査報告書」の有無のみが記載欄として設けられているにすぎないため、定期検査報告書については、余白や別紙にて保存状況を補足記載・説明しなければ、宅地建物取引業法第35条違反となるおそれがあります。国土交通省の様式を使用する場合には、この点に十分注意してください(全日及び全宅様式を使用するのであれば問題なし)。
また、定期検査報告書のうち一部の建築設備及び施行令第16条第3項第2号で対象とならなかった防火設備については、建築主事を置く市町村又は道府県の独自規則により対象範囲が異なる可能性があるため、一律の運用ではないこともあわせてご留意ください。

敷地権化された区分所有マンションの専有部分(いわゆる「分譲マンション」)の売買において、「建物」の登記情報(建物謄本)の取得は当然の前提ですが、その場合に別途土地の登記情報(土地謄本)は取得しなくてよいのでしょうか。
宅地建物取引業の書面の電子化を可能とする宅地建物取引業法施行令及び同法施行規則が改正され、令和4年5月18日に施行されました。これにより、宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約締結)、第35条(重要事項説明)及び第37条(売買もしくは交換または貸借の契約締結)に基づき交付する書面について、紙に代えて電子的に作成した書面を電子メールやWeb からのダウンロード形式等を活用した電磁的方法により提供が可能となったため、従来は一堂に会して対面で行っていたことを、パソコンやテレビ、タブレット等の端末の画像を利用して、対面と同様に説明を受け、または契約を締結することが可能となったのです。
宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結した場合や仲介業者の立場で契約を成立させた場合には宅地建物取引業法第37条第1項各号に規定された事項が記載された書面(以下、「37条書面」という。)を取引の相手方等に交付すべき義務を負いますが、この書面は「不動産売買契約書」として兼用することが実務上一般的となっていることから、「不動産売買契約書」は宅地建物取引業者が代理作成できる、と解釈している人がいるのではないでしょうか。
宅地建物取引業法では、宅建業者が宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約を締結したときは、
重要事項説明書には、例えば宅地建物取引業法第35条第1項第1号の規定に基づき、『登記記録に記録された事項』について記載しなければならない項目がありますが、この記載欄に「
再建築不可物件の売買仲介の際に、購入希望者からおそらく「どのようにすれば再建築が可能になりますか?」というご質問を受けることでしょう。
過去に物件調査を伴う重要事項説明書や売買契約書の作成をどこかの業者に依頼して、たまたま良い内容の成果品をいただいたら、あなたはおそらく次もそこに依頼することでしょう。
当事務所では、ときどき下記のような問い合わせをいただくことがあります。
大抵の職種においては、仕事が早い方が遅い人より重宝されます。
売主が宅建業者で貴社が一般エンドとの間に立ってその仲介をする際に、重要事項説明書及び売買契約書の作成をその売主業者から依頼されることが多いかと思います。
以前、当サイトに「



公有地の拡大の推進に関する法律、通称「公有地拡大推進法」または「公拡法」とまで略される法律ですが、仲介業者がこの法律にかかる調査をすっかりスルーし重要事項説明書の記載を失念してしまうと、それに気づかず届出をしなかった売主に50万円以下の過料が課されることがあるのです。また、携わった仲介業者が重要事項説明義務違反による行政処分を受けてしまうことがありうるほど無視できない法律であることをご存知でしょうか?
私は不動産売買における重要事項説明書の作成を宅建業者の立場で支援する仕事をメインにしています。

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フルコミッション不動産外交員(営業マン)と業務委託契約を結ぶ際、歩合率をいくらにするか迷われる事業者の方もいらっしゃると思います。






宅建業者の店舗または事務所において、業者票とともに重要なのが「報酬額表」。
私は国交省職員時代に行っていた立入検査を含めると、通算して数百の業者票を目にしてきました。

宅地建物取引業法において、宅建業者がお客様との媒介契約に基づき当該報酬(仲介手数料)を全額請求できる時期は、あっせんした売買契約が成立した時点であって、売買代金を全額払い込む決済時までではない、と解されております。
宅地建物取引業に関し国土交通大臣が定めた標準媒介契約約款(昭和57年建設省告示第1110号)では、「特別に依頼した広告」の料金は依頼者が宅建業者にその実費を支払わなければならない旨規定した条項があります。

従業者の一部または全員を雇用契約ではなく、フルコミッション(完全出来高制による業務委託)で営業職に従事させている宅地建物取引業者もいまだ多く存在することと存じますが、当該業者におかれては宅地建物取引業法との関係で留意すべき事項が数点あります。
不動産業界において悪質だとされている広告の代表例に「おとり広告」があります。


宅建業に従事する者のうち、5人に1人以上「専任」の宅地建物取引士を設置しているか(法31条の3)