私は不動産売買における重要事項説明書の作成を宅建業者の立場で支援する仕事をメインにしています。
そこで意外にも一部の宅建業者から「区分マンションの取引は非常に安全だし、重要事項説明書の作成も簡単だから山地さんに支援してもらうことはないよ。」という方がいます。
別に私に依頼する、しないは構いませんが、本当に区分マンションの取引は安全で、重要事項説明書の作成も簡単なんでしょうか?
私は逆だと思います! 区分マンションの取引は一歩間違うと更地や戸建と同等以上のリスクがあります!だから、重要事項説明書の作成もとても大変なのです!!
その調査及び作業量は、更地や戸建の2倍近くになります!
正直、ウチの事務所では区分マンションの重要事項説明書の作成支援はあまりに割が合わず敬遠したいくらいです。
まず、更地や戸建と同様、役所や現地で行う物件調査はほとんど同じレベルの調査量が必要です。
さらに、区分マンションには特有の調査があります。それは、マンションの管理に関する項目です。
共用部分を管理する管理会社があるのなら、そこにお金を払って重要事項調査報告書、管理規約集及び議事録などを取り寄せ、それをしっかり読み込んでいかなければならないのです。
不明な点があれば、管理会社の担当者に電話をしてヒアリングします。
また、自主管理マンションでは管理組合の理事長や会計担当者から粘り強くインタビューしなければなりません。
このため、その労力は大変なものです。
しかも、買主にとってはマンションの管理に関する項目が一番生活に密着するため、重要事項説明書の記載には間違いが一切許されません。
区分マンションは楽勝だ、という宅建業者または営業マンはこういうことの責務を認識していない人がほとんどだと思うのです。
そもそもそういう人は読込が甘いのが特徴で、トラブルになるのは時間(件数)の問題です。
例えば、一括受電方式を採用しているマンションの場合、電気の小売事業者を購入者が好きなように選べません。
光熱費を少しでも節約したいと考える買主にとっては購入に関わる大きな判断材料になることをご存知でしょうか?
また、事務所やSOHOとして利用する前提で購入しようとしているにもかかわらず、「住宅以外の使用は不可」を見逃し、このことを重要事項説明書に記載していないケース。
さらに、区画整理や大規模修繕工事の一時金徴収が近く予定されていることを調べ上げていないケースなど。
よって、区分マンションには円滑な不動産取引を阻害する、より多くの地雷が潜んでいる可能性がある、というくらいの気持ちで取引に望むことが重要です。
決して「区分マンションだから重要事項説明書の作成は簡単」だと思うことは禁物ですよ。
民事上及び行政上(監督処分)の責任を追及されることになるかもしれません。