敷地権マンションの土地謄本取得は必要?

敷地権化された区分所有マンションの専有部分(いわゆる「分譲マンション」)の売買において、「建物」の登記情報(建物謄本)の取得は当然の前提ですが、その場合に別途土地の登記情報(土地謄本)は取得しなくてよいのでしょうか。

「敷地権」とは、区分所有法に基づき、専有部分と分離処分できない形で設定された土地の持分(所有権や借地権など)をいいます。敷地権化された区分マンションの建物謄本には、この「敷地権」に関する土地の表示の記載があります。これにより、「敷地権」の内容は建物の登記の内容に付随しますので、売買対象となる建物の専有部分とそれに付随する土地に対するそれぞれの権利については、たしかに一心同体です。

しかし、建物謄本に記載されているのは、あくまで当該敷地権の目的たる土地として、所在・地番・地目・地積と、敷地権の種類及びその割合にとどまり、敷地となる土地の”全部又は一部”に他の第三者の権利、例えば地上権や地役権などが設定されているかどうかまでは反映されていません。そのため、これらの情報を確認するには、別途、土地謄本を取得する必要があります。

たとえば、次のような第三者の用益物権が設定されている場合、それは建物謄本からは読み取ることができません。

・地下鉄道用地の区分地上権:地下を通る鉄道のために、敷地の一部に地上権が設定されている場合があります。
・送電線路用地の地役権:電力会社等が送電線を架設し、引き続き維持管理を円滑に行えるようにするため、線下の土地を承役地とした地役権が設定されているケースです。
・水道管埋設の地役権:上下水道の太径配管を地中に敷設する場合、将来的な掘削や管理作業に支障が生じないよう、建築物の設置や重量物の載置に制限を設ける趣旨で、その土地を承役地とした地役権が設定されることがあります。

これらの用益物権は、土地の利用や評価に大きな影響を及ぼします。将来的にマンションの建て替えや敷地の有効活用を管理組合で検討する際、これらの用益物権が制約となる可能性があることは言うまでもありません。そのため、実務においては、土地評価額の30~50%程度が地役権や地上権による制限の対価として、設定契約時に地権者(土地所有者など)へ一括で支払われるケースが多く見られます。その結果、当該マンションの敷地権の価格は、一般的に近隣の相場よりも低くなる傾向があります。

つまり、敷地権の目的となる土地の”全部又は一部”にこれらの用益物権が設定されていた場合、その存在を考慮せずに価格を査定してしまうと、結果として買主に不当に高額な取引をさせてしまうことから、将来的にトラブルになる可能性をも潜んでいます。

このように、敷地権付きマンションの売買においても、土地謄本を別途取得して用益物権の有無を確認することが必要です。敷地の”持分”だけに注目するのではなく、敷地権の目的となる土地の”全部又は一部”にどのような権利が設定されているかを把握し、購入予定者に対し説明することで、その不動産の経済価値に対し、誤った意思決定を回避させることができるのです。

以上について、不動産営業担当者は十分留意してください。

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