仲介手数料債権の発生時期

宅地建物取引業法において、宅建業者がお客様との媒介契約に基づき当該報酬(仲介手数料)を全額請求できる時期は、あっせんした売買契約が成立した時点であって、売買代金を全額払い込む決済時までではない、と解されております。

 

したがって、宅建業者が(決済時まで待つこともなく)売買契約成立時に仲介手数料をお客様に半金ないしは全額を請求し、それを受領することは法律上問題ありません。

(ちなみに、当事務所のグループ会社では「決済時」に一括して頂戴しますが、売買契約の成立時点では一銭もいただきません。)

 

そこで、宅建業者はもちろん、これから宅建業者と媒介契約を締結しようとするお客様におかれましては、以下のことを知っておくと良いでしょう。

 

①売買契約当事者(売主または買主)の債務不履行による解除

⇒仲介手数料の返還なし(ただし、仲介した宅建業者の義務違反があれば別。)。

 

②手付放棄・手付倍返しによる契約の解除

⇒仲介手数料の返還なし。

 

③売主と買主との間の合意解除

⇒仲介手数料の返還なし。

 

④買主のローン不成立による契約の解除

⇒宅建業者と交わした媒介契約が、国土交通省の定める標準媒介契約約款を使用していた場合、仲介手数料は返還されなければならない。

 

⑤停止条件付の売買契約を締結したが条件が成就しなかった場合の解除

⇒宅建業者と交わした媒介契約が、国土交通省の定める標準媒介契約約款を使用していた場合、報酬の請求はできません(あらかじめ仲介手数料を受領することはできません)。

 

注意!)上記④⑤の場合、標準媒介契約約款を使用しているか否かにより係争に発展するおそれもあるため、宅建業者と媒介契約(売主買主との売買契約と混同しないように)を締結する際には、その契約書面に十分注意しましょう。

標準媒介契約約款を使用しない業者とは、媒介契約(仲介の依頼)をしないことをお勧めします!

 

 

<参考>

媒介の意義

仙台高裁秋田支判昭和46.11.2、刑月3巻11号1431頁「(宅地建物取引業)法第2条二号所定の売買の媒介とは、売買当事者の少なくとも一方の依頼を受け、当事者の間にあって契約の成立をあっせんするすべての行為を指称する。」

 

 

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