「戸籍を追えばすべてがわかる!」
こんなふうに言い切ってしまう専門家もいるようですが、 普通に戸籍を追っただけでは相続人が特定しきれていないことがあるのです。
つまり、戸籍をいくら遡っても、相続権のある重要な隠し子の存否は不明…
そんな怖い事例をご紹介します。
上の図を見てください。
被相続人(今回亡くなった人)はEです。
Eは生涯未婚、かつ、子はいません。
こうなると、Eの兄弟姉妹も相続人になり得る可能性があるため、すべての相続人を確定させるにはEの出生から死亡までの戸籍を取得するだけでは足らず、父Aと母Bの出生から死亡までの戸籍を取得する必要があります。
そこでこれらの戸籍を収集した結果、Dが唯一の相続人であることがわかりました。
EからDへの所有権移転(相続)登記も無事に終わり、Dもホッと一息。
ところが後日、「自分もEの相続人である」と名乗るFという者がやってまいりました。
Dは戸籍を辿ってもFという人物はどこにも出てこなかったため、何の疑いもなく追い返しましたが、
なんとFは、自分が出生した時の戸籍を取り出して見せました。
それは「母」の欄にBの名が記され(「父」は空欄)、「父母の家に入ることを得ざるにより一家創立」と記載されたF単独の戸籍でした。
昔は戸主の判断により、相応しくない者を当該戸籍に入れないことができたのです。
この場合、戸主であったAは、自分との血縁関係のないFを自分の戸籍には入れたくなかったのでしょう。
いずれにせよ、FはBの子であることには間違いはなく 、よってDとは半血の兄弟=共同相続人(相続分は異なります)、ということが判明しました。
このように、相続人(隠し子)側からのアプローチがなければ容易には知りえないことも有り得るので、遺産分割や遺言書の作成、その他相続手続きにはくれぐれも安心しすぎないことが必要です。