私は開業当初の数年間、行政書士業務以外に個人で宅建業の免許を受け、不動産売買の仲介も行っていました。それ以外に不動産仲介会社に勤めていた経験は特にありません。そのため、仲介実務そのものは特に明るいという訳ではありませんが、何となくその頃は「売り物件を預かりたい」なんていつも考えていました。おそらく、不動産仲介業をメイン業務にしている会社(営業マン)も、そのように思っている人が多いのではないでしょうか。
なぜなら、物件を預かれば、レインズやポータルサイトに登録さえしておくだけで、黙っていても他の仲介業者が客を見つけて来てくれるから楽だ、と思っていたからです。
しかし、今となれば「物件を預かる=物元、元付業者になる」ということは、逆にデメリットばかりが思いつきます。
<元付業者の大変なところ>
①売却対象物件の価格査定を行い、売主に査定書を用いて意見する。
②売出価額(媒介価額)を決めて媒介契約書を作成し、遅滞なく売主と交わさなければならない。
③マイソクを作成するための物件調査をすぐに行なわなければならない。
④専任または専属専任媒介契約を締結した場合、媒介契約締結日から7営業日または5営業日以内に少なくともレインズに登録する作業をしなければならない。
⑤レインズ等を見た他の業者からの広告承諾や物件確認の対応が面倒くさい。
⑥専任または専属専任媒介契約を締結した場合、2週間または1週間に1回以上の頻度で文書または電子メールのいずれかの方法で業務の処理状況を売主に報告しなければならない。
⑦売主の売却希望価格が相場より高い場合、なかなか買い手が見つからず、案件の手離れが悪い。
⑧買い手がなかなか見つからないときだけでなく、当初から売出価額が相場より高めで、成約に至るまでの難易度が高いと予想されたときは、レインズやポータルサイトの登録だけでなく、広告チラシを作成して配ったり、成約時に売主からいただける仲介手数料の一部を客付業者に謝礼することを条件にしたり…など、かなりの費用・報酬を犠牲にしなければならない。
⑨買付が入れば、重要事項説明書及び売買契約書のドラフトを作成しなければならないケースが多い(大抵は元付業者が作成)。
⑩一向に買付が入らない場合は、売主がしびれを切らし、媒介契約の更新を拒絶されることもあり、すべての時間・労力・費用が水の泡となる。
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以上、思いついたところを書いてみました。
では、逆に客付業者はどうなのでしょうか?
<客付業者の大変なところ>
①相当な個人的信頼関係がなければ、購入希望の物件の売買契約締結時まで媒介契約を締結することはないため、客をつなぎ留めておくことが難しい。
②元付業者に比べ、建築や住宅ローンをはじめとする幅広い知識が必要(コンサルティングスキルが必須)
③自社サイトなどに多くの物件情報を取りそろえるため、元付業者に片っ端から電話をし、広告の承諾や物件の存否確認など、非常に手間のかかる作業を根気よく続けていかなければならない。
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客付け業者の大変なところはもちろんこれ以上あることでしょうが、少なくとも元付業者がけっして楽ではないことがわかるかと思います。
特にこれからの「不動産」は一部を除きますます換金しにくくなっているので、売主のために真摯に取り組もうとする営業マンにとって、売り物件を預かることはそれなりのプレッシャーも感じるはずです。
そんな中で、「常に新しい人と出会いたい」「自分の知識を生かして、人の新生活に貢献したい」と思う人がいれば、客付に重きを置く、または客付専門を売りにしてやってみる、のも良いのではないでしょうか。