宅建業法37条書面の作成は法律家に依頼を!

宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結した場合や仲介業者の立場で契約を成立させた場合には宅地建物取引業法第37条第1項各号に規定された事項が記載された書面(以下、「37条書面」という。)を取引の相手方等に交付すべき義務を負いますが、この書面は「不動産売買契約書」として兼用することが実務上一般的となっていることから、「不動産売買契約書」は宅地建物取引業者が代理作成できる、と解釈している人がいるのではないでしょうか。

このことについて、国土交通省が宅地建物取引業法の解釈・運用を行う際の基準として作成した「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、下記のとおり記されています。

第37条関係
書面の交付について
本条の規定に基づき交付すべき書面は、同条に掲げる事項が記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができる。

これは「不動産売買契約書37条書面 ではない」(不動産売買契約書は宅建業者が当然に作成できるという趣旨について言っていない)ということが上記の文面で読み取れますでしょうか。

 

ところで、どのような目的の契約書であれ、少なくとも「契約書」と名の付く文書であれば、これを業として代理作成できるのは、弁護士は当然であるとしても、そのほかでは行政書士くらいです。

行政書士法(抜粋)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
Ⅱ(略)

※権利義務に関する書類とは、「権利義務の発生、存続、変更、消滅の各効果を生じさせることを目的として作成する書類」(青山登志朗(1993)『新版行政書士マニュアル』、第一法規出版)と説明しています。

 

つまり、何がいいたのかといいますと、「不動産売買契約書」は権利義務が内容となる書類であることから本来業として作成できるのはその筋の専門家である弁護士または行政書士であるにもかかわらず、その道の専門家ではない宅建業者が当然のように代理作成している実態が不思議には思いませんか、ということです。

これは別に弁護士法や行政書士法に違反しているのではないか、ということを問題提起しているのではありません。
37条書面を交付しなければならない義務がある宅建業者ですから、法律に詳しい宅建業者であれば、その者が作成した37条書面を不動産売買契約書として兼用しても宅建業法上は差し支えありません。

しかし、法律に疎い宅建業者が作成した37条書面を「不動産売買契約書」と兼用することは、トラブルを未然に防ぐという契約書作成の重要な目的にそぐわないため絶対にやめましょう(保証協会の定型書式を使用したとしても、条項の追加・改変や特約の作成までは行わないように)。

すなわち、宅建業者は弁護士や行政書士に37条書面としても使える契約書を作成してもらった方が取引の安全が図られ、貴社の信頼確保にも繋がるのではないでしょうか。

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