媒介契約書の作成を後回しにしない

<参考>宅地建物取引業法では、宅建業者が宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約を締結したときは、遅滞なく、媒介契約書を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない旨の規定が設けられています。

ところが、大手仲介業者を除く一部の宅建業者は、宅地建物取引業法(第34条の2)の規定を知ってか知らずか、媒介契約書を作成して「遅滞なく」売主から署名とハンコをいただきその書面を交わすことはせず、後回し(売買契約成立時など)にしているのを見かけます。

確かに、このことだけをもって見れば、売主に即損害を与えることはありません。また、媒介契約が民法上では委任の規定が準用されると解釈されていることから、(民間人同士では)意思表示のみで契約が成立することにかんがみると、書面を交わしていないことをもって媒介契約が成立していないとはいえない、と考えます。

しかし、大事なことは、これをいいことにあまりノンビリしていると、他の仲介業者にその客を持っていかれることがあるのです!

「客の横取り!?」をした業者が、一般媒介を除く媒介契約(専任または専属専任)を締結した場合、あなたの会社よりも先に書面を交わしていれば、いくら媒介契約が諾成契約(当事者の合意のみで契約の効力が生じること)であるからといっても、証拠として有利となる書面で交わしていない以上、係争に持ち込んでもあなたの会社はとても不利な立場となる可能性があります(書面を交わしておかないと売買契約あっせん成立時における媒介報酬請求権についても否定されないとも限りませんし、認められたとしても仲介手数料の上限いっぱいまで取れることはないでしょう)。

また、国が民間人(宅建業者ほか一般個人・法人)を規律する宅地建物取引業法との関係では、媒介の契約を締結したときに「遅滞なく」媒介契約書を作成して相手方と交わさないと法律違反となり、取引関係者などからの通報により最悪の場合、指示や業務停止などの行政処分を受けることさえあります。

ちなみに、法令用語として使う「遅滞なく」という言葉の意味は、「直ちに」や「速やかに」に比べ即時性において遅く、正当な又は合理的な理由による遅滞は許容されるものと解釈されているようです(大阪高判昭和37年12月10日刑集15巻8号649頁)。

したがって、「何日以内に」という決まりはないものの、いずれは必ず作成し交付しなければならない書面であることから、特に物件の売主となる依頼者とは早めに媒介契約書を作成して交わしておくことをお勧めします。

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