大臣免許業者の書類レビュー能力について

ダウンロード売主が宅建業者で貴社が一般エンドとの間に立ってその仲介をする際に、重要事項説明書及び売買契約書の作成をその売主業者から依頼されることが多いかと思います。

そうなると貴社は売主業者から税込3%の報酬を頂くことが一般的なので、それをやむなくやらざるを得ませんね。

でも、私が思うに重要事項説明書の作成は本来物元か、売主業者がドラフトを作成すべきだと思っています。

物件のことを一番知る立場の人がドラフト作るの、当然だと思いませんか?

客付けしただけでもその仲介業者に感謝すべきだと思うのですが。。。

 

まあ、それは置いたとしても、仲介さんが一所懸命役所調査をしたドラフトに、誤字脱字があった場合は別としても、いかにも上から目線で修正させる、という売主業者はどういう自信もしくは根拠でそうさせるのでしょうか?

「(ウチの会社の法務部によるレビューでは)ココとココの修正をしていただかないと決裁されず、契約できない」、と。

 

実は、そんな重説のドラフトを作っているのは私だったりすることもあるんですがね~。

 

街の不動産仲介会社に重説・契約書を作成させておいて得意げに修正を求めているようですが、元国土交通省宅建業法所管の私からすれば、本当にそのご指摘、笑えます!

 

例えば、最近施行された水害リスク情報の重要事項説明への追加について、全日(ウサギ)及び全宅(ハト)の様式では水害ハザードマップが有か無かをチェックしなければならない項目がありますが、私は雨水出水(内水)及び高潮のハザードマップは「無」としました。ところが、このことについて、

「内水ハザードマップは現にあるでしょ、なんで「無」にチェックなの?(ウチの法務部のリーガルチェックは凄いから…)」

というご指摘がありました。

 

でもこれは、水防法(第15条第3項)に基づくハザードマップがあるかどうか、という意味なので、水防法第15条第3項に基づかないハザードマップの場合は「無」にチェックを入れなければなりません。。。

当該市町村が任意で作成した、または、住民の通報によって作成したような浸水実績図のようなハザードマップについては、「無」となるのです!

また、水防法第14条に基づくハザードマップ(例えば、東京都が作成している「高潮浸水想定区域図」)であっても、宅建業法では水防法「第15条第3項」のことを水防法に基づくハザードマップとしていますので十分注意してください。

ちなみに、そのハザードマップについて「無」と記載した上で、それらのハザードマップの内容を伝えることは(行政として)むしろ望ましい、ということにはなります。

役所調査の際には、必ず「公開されているハザードマップは、水防法第15条第3項に基づく洪水、雨水出水(内水)、高潮でしょうか?」とまずは聞くようにしましょう!

水防法(第15条第3項)に基づかないハザードマップを「有」とするのは宅建業法違反に繋がりかねません。

以上の法改正については、国土交通省のHPでこの件に係るQ&Aが公表されているので、ぜひ勉強してみてください!

 

さらに、こんな指摘もありました。

対象不動産の存する地域は確かに「特定都市河川浸水被害対策法」における指定流域内でありました。

しかし、私はこの法律について、「都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限」の項目でこの法律にチェックマークをしませんでした。

これはさすがに私が誤っていると思いの方、いらっしゃるでしょう。

 

でも、この法律の規制対象は、取引対象となる土地の面積が1,000㎡以上、または、開発行為等により設置された雨水貯留浸透施設がある場合の一定の行為に対し、知事等の許可が必要となる内容です。

そうなると、今回の取引対象となる土地の面積はわずか120㎡しかありませんし、また、雨水桝はあるものの、これをこの法律でいう「雨水貯留浸透施設」があるとは言わないのです。

 

こういう場合はいくらその区域内に対象不動産があったとしても、政令(宅地建物取引業法施行令第3条)で規定する「当該宅地又は建物に係るもの」と言えないので、本来チェックを入れるべきではないのです(まあ、入れてもダメではないですが、買主に余計な不安を煽るだけです)!

そうでないと、区分マンションの一室の売買でも、国土利用計画法や公有地拡大推進法などにもその土地全体の規模によってはチェックを入れなくてはならないことに繋がりますよね。

それと同じです。よく考えましょう!

 

なら、景観法なんて「一定規模の取引には届出が必要」ということでその届出規模以下だからチェックは不要なの?

と言われれば、これは違います!

届出は不要、なだけで、その規制が区域全体に及ぶことが一般的なのではないですか。

 

また、航空法なんて、例えば高さ制限が152mなんて当該不動産に関係ないから、これもチェック要らないよね。

⇒これは確かにそんな高い建築物は用途地域や高度地区で制限されていて建つことはできないでしょうが、航空法が適用される地域は少なくとも航路であると言えるので、騒音などが発生する可能性が高い地域なのです。

こういう場合は例外ですが、航空法にチェックマークをして注意喚起をお伝えすることが望ましいでしょう。

 

そういう訳で特に売買の重要事項説明書の作成は高度な法的思考力が必要となり、難しいですね。

大臣免許業者でもその程度のレベルで作成しているので、間違いとして指摘されても堂々と反論できるくらいになれるよう、勉強していきましょう!

 

本件については、私に重要事項説明書の作成をご依頼いただいた仲介業者様に売主様(大臣免許業者)が修正に応じるよう圧力をかけられ、最終的に不本意ながら修正に応じざるを得なかったそうです。

仲介業者さんにおかれては、自信を持ってご自身が正しい調査の結果を反映させた成果物だと思ったら、意にそぐわない修正を求められた場合、その売主業者から一筆もらっておいた方がいいと思います。

これは最終的に共同責任となりますことを十分ご承知いただき、ぜひご自身の会社を守ってください!

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