不動産コンサルと業際問題

私のようなコンサルタントやFP、その他士業の方々が業務を受託し、十分留意しなければならないことの一つに、業務に関わる関連法規がある。

特に昨今では、士業全体の人数が増加し続けているにもかかわらず、需要自体が減少しているため、特に他の士業との間での足の引っ張り合いみたいなこと(悪い言い方だが)が多く起きるようになった。

最近では司法書士が非弁活動を行なったとして弁護士法に違反し逮捕された例がある。これは全国初らしい。 

確かにこの事件に関しては司法書士法の枠を超えてしまったことは明らかなようであるが、そもそもそれぞれの士業の職域については、法令で規定はされているものの、解釈上の問題からグレーな部分が多く存在する。

よって、我々コンサルタントや士業に携わる者は、これはもしかしたら他士業の職域にかかるかもしれない…というアンテナを常に張っておく必要がある。 

私は相続案件も扱うことから、時にお客様から「相続税の納税が必要になるのかどうか心配だから、財産評価額の概算を出して欲しい。相続財産はこの土地建物だけだ。」と言われることがある

このようなご依頼は、不動産の知識を売りにしている私にとって、当該依頼を受任し相続税法第22条が依拠する財産評価基本通達に基づく不動産の評価額を算出することぐらいは容易なことであり、顧客の切なる希望なら応えてあげたい気持ちになるのは当然、これぞ私だけで完結できる職務であると… 

しかし、ここが思慮深さを要するところである。このような依頼を何の疑いもせずに受託してしまうと税理士法第2条に抵触する可能性が非常に高いのである。

「個別具体的な納税に係る相談等」については、いくら不動産だけとはいえ、概算でも提示できない。

だから個人から納税の問題で評価依頼が来たときは、当該お客様の顧問税理士か、いなければ当所の提携税理士へまずはご案内することとしている(少なくともコンサルタントは敷居を低く保ち、第一の相談窓口としての役割はある。そこで専門家を案内することについては報酬を得られないにしても我々の役目であると自身は認識している。)。 

では、コンサルタントは単なるボランティアか…と感じるかもしれないが、逆に税理士を通じて「当該不動産に係る時価を財産評価基本通達に基づき算出してくれ」と言われれば、税理士法に抵触する可能性は極めて低くなる。

それは、税理士そのものからの依頼だから問題ないというのではなく、「個別具体的な納税に係る相談等」を受託していないからである。あくまで「財産評価基本通達に基づく時価」を出すことの依頼であれば、税理士の依頼に基づき不動産コンサルタントが当該不動産に係る時価の査定を請負うこと自体は特に問題ではないはずである(税理士の先生方は必ずしも「不動産」に明るい人ばかりではない、と聞いている。)。 

ただし、不動産の鑑定評価に関する法律の観点から言えば、同法第2条第1項に規定のある「不動産の経済価値を判定し、その結果を価額に表示する」作業(いわゆる本来の時価を求めるものであり、デューデリジェンスを含む)を個別の不動産について不動産鑑定士の資格のない者が経済価値を「判定」し価格として表示すると、いくら評価という言葉を使わずとも、これもまた同法に抵触する可能性があることには留意を要する。

なお、これは宅建業者が業として価格査定を行っていることとは別の次元である。なぜなら、宅建業者はその結果を売主又は買主に査定額として提案はすれども、価格の「判定」を行なっていないからである。 

 

以上は私の個人的な見解によるものではない。

こういうグレーな問題がおきたら、行政法規であれば必ず所管する行政庁(当該ケースの場合、税理士法を所管する国税庁や鑑定評価法及び宅建業法を所管する国土交通省)に見解を確認することが必要である。 

なお、グレーな問題であるか否かを感じ取れるかはリーガルマインド(法的思考力)がしっかり身についているか、ということにも繋がる。リーガルマインドを養うためには、常日頃から自身が行なってる業務について様々な角度から問題提起をし、思考する癖を身につけることが必要であると思料する。

これは弁護士や司法書士などのいわゆる法律家と呼ばれる人に限ったことではない。我々コンサルタントや他の士業も必須なスキルである。 

日々目先の利益にとらわれず、常に法令遵守を心がけることは、自身の生活の糧を突然失うことを防げると同時に、ひいては提携士業やお客様のために貢献できるもの、と理解したい。